03/じゅんじぃのクッキングスタジオ/半人前が作る二人前

どうしてこうなったのだろう。気が付けばスーパーで手に取っていたのは豚バラブロックであった。

朝方は羽根つき肉餃子を作ろうと意気込んでいたはずだったのに、本のあるページを見た瞬間、完全に気持ちが切り替わってしまった。

「豚の角煮」は普段よく食べるものではない。ないからこそ、無性に食べたくなる時がある。そして、本に載っていた必要な材料を見た瞬間、今夜の晩ごはんが決定したのだった。

豚の角煮を作るために、調味料以外ほとんど材料は必要ない。気持ちばかりのネギさえ添えれば、あとは豚肉が最大限のパフォーマンスを発揮してくれるというのだ。前回、さんざん野菜の炒める順番など偉そうにしゃべったが、材料が少ないなら少ないに越したことはない。

ぱっと見でメニューを決めた浅はかさに気づいたのは、さぁ、料理を始めようとしたその時だった。まさか地獄のツーデイズツアーになるなんて…。

さっそく調理編にいきたいところだが、ぐっとこらえて買い物編に軽く触れておこうと思う。料理ができない人間は、料理中以外でも様々な困難に直面しているものだ。

料理の本には「豚バラかたまり肉」と書いてあった。そして、スーパーに行くとその文言が見当たらず、一番可能性が高いものは「豚バラブロック」という肉であった。この記事を読んでいる人からすれば、「いやいやじゅんじさん、さすがにそれは狙いすぎじゃないですか?その二つは多少表現が違えど同じものだと普通わかるでしょ?」という声が聞こえてきそうだからあえて言わせてほしい。

その微妙な文言の違いにさえ敏感にならざるを得ないほど、僕は料理に対して神経質になっているのである。自分の勝手な思い込みが後々に料理に致命的な影響を与えることをなんとかして阻止したいと思っているのである。

かといって、目当ての肉が見つからなかったから豚の角煮を諦められるほど、僕の胃袋は利口ではない。一度食べたいと思ったら何が何でも食べたくなってしまう。

そこで、ひとまず豚バラかたまり肉を購入することにしたのだった。

お待たせしました、調理編!さて作るぞと思ってページを読み進めると、いきなり衝撃の文言が書かれていた。

「焼いた肉を鍋に移し、弱火で1時間半~2時間ゆでる。」

何ということだ!今まで、長くても全ての工程が1時間程度だったのに、ゆでるという1工程で最長記録を樹立してしまうではないか。しかも、ゆでた後もどうやらタレと絡めて30分ほど煮ると書いてある。

終わった。見積もりが甘すぎた。夜からオンライン飲み会の予定があったため、どんなにテンポよく調理を進めても間に合わない。もちろんテンポよく調理が進む可能性もほぼ皆無だ。

こうして、戦う前に僕の豚の角煮Day1は終了してしまったのである。

そして翌日、再び台所へと向かうこととなった。今回も決して時間にゆとりがあるわけではなかったが、ぎりぎり間に合うはずの時間に調理を始めることができた。

豚の角煮は決して調理が難しいわけではないと思う。豚肉やネギを大体の大きさに切る以外は、焼く・ゆでる・煮るといったことをするだけで、ほとんど待つことになる。たまに灰汁をすくう以外は、ただひたすらに待ち続けた。

そうそう、ここで一つ愚痴を言うとするならば、料理本はどうして2人前の分量を記載するのだろう。今までも毎回2人前の料理を食べてきたのは、もちろん僕が食いしん坊であることも一因ではあるが、一番の理由はまだ他の誰かに食べてもらうのは申し訳ないレベルであるからだ。

料理本にはご丁寧に、ただ単純に分量を半分にしても1人前になるわけではないと書いてあった。確かに調味料などすべてを半分にすることが正しくないことはなんとなくわかる。何となくわかるが今回は黙っていることができなかった。

なぜならば、豚肉の分量が900g~1000gとなっていたのだ!

買い物中、豚肉をかごに入れていく最中、これはいくら何でも多すぎるということは僕にも分かった。わかってはいたが、勝手に分量を減らす勇気も持ち合わせておらず、大量の肉とともに帰還したのだった…。

話を戻すと、豚肉が茹で上がるのを待って、待って、タイムリミットを睨みながらなんとか完成させた豚の角煮は見た目も比較的よくできており(あくまで、今までの料理と比較してであることに注意していただきたい)、自分の中の期待値もだいぶ高まっていた。

お皿に盛り付け、口に大ぶりの肉塊を運んだ時に感じたのは、

「味が薄い」

その一言だった。

思い描いていた味と比べるとかなり優しい味付けになっており、ご飯のお供にするにはやや役不足であった。役不足ではあったが、地獄の2Daysを乗り越えて出来上がった豚の角煮を残す理由はどこにも見当たらなかったのである。

僕のお腹が膨れ上がるにつれて、お皿の中身は跡形もなく消え去り、今回も無事に完食することができた。きっと、僕が完食できない日が来たときは、量の問題ではなく史上最高にクレイジーな品を作ってしまった時なのだろう。

長い時間をかける料理はもしかするとまだ早かったのかもしれない。もう少し短い時間でできる料理を、丁寧に確実に作ることから始めた方が上達できるのではないかと思った。

ただ、豚の角煮については、1人前の分量がわかり次第、もう一度作ってみたいと思った。